FACT FULNESS

COLUMN "next one more"

「FACT FULNESS」/ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド(日経BP社)

冒頭、世界情勢に関する13の三択問題が出題されます。一見すると誰でも正答できそうではないかと思われるような質問に対して、政府関係者や学者などその道に明るいと思われているような人たちでもその全てに正解した人はいないのだそうです。正答率は質問の意味が分からずにランダムに回答するチンパンジーの正答率(33.3%)をも下回るのです。

それは、私たちが事実を認識する際に様々な本能的な思い込みを持っているからなのだそう。

物事の本質を見極めるのに、普段私たちがつい陥りがちなバイアスを排し、情緒や思い込みに流されず、データに基づいてファクトだけを客観的に評価する姿勢は本当に大切だと思います。自分の感覚はそれほど間違っていないだろう、と思っていた私も半分以上の回答を間違えてしまいました。普段のマスコミ情報や大昔に学校で教わった知識にいかに拘泥しているのかがよく分かりました。

自分の感覚や評価は間違っていないとうそぶいている人に限って、実は話を聞いていると眉に唾したくなることが多いというのは誰にも経験のあることではないでしょうか。

もちろん、何らかの判断や行動を起こす時には自分なりの価値感覚や判断の基準といったものは必要です。大事なことは事実を事実として額面通りに受け取る姿勢と個人の感情や感覚とを一緒くたにしないこと、そして人はついついそうなってしまいがちなことに自覚的であることではないかと思うのです。感情に流されず、常に客観的でニュートラルな視点を持ち合わせ続けるというのは難しいことです。SDGsのようなグローバルで長期の目標を達成するためには、まずこうした客観的で正しい事実の認識が基本となることは言うまでもありません。

この本がただのノウハウ本や指南本に終わらなかったのは、筆者のハンス・ロスリング氏のこれまでの医師としてのいくつもの失敗が率直に書かれてあるところです。目を見開いてファクトを正しく認識できていれば犯さなかったであろう痛恨のミスが挿話として描かれています。科学者としての自己を謙虚に内省する姿勢はこの本のもうひとつのストーリーです。

そして、この本はあとがきにドラマチックな展開が用意されています。このあとがきによってポジティブで丁寧に人生を紡いだ人の物語を知ることにもなるのです。

(Kazu)

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